SAKURAシートからセレッソ大阪を見守るブログ

元ゴール裏住人が、選手に一番近いSAKURAシートからセレッソ大阪を見守るブログです。普通の人よりセレッソ大阪を好きだけど、人生をかけるほどではない。単に好き。それ以上でも以下でもない。

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山形戦で足りなかったものがようやくわかった。

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最初に異変に気が付いたのは、自席に座ったときだった。すでにセンターサークルにボールはセットされている。キックオフ間近。観客はスポンサー様の招待のあった前節岐阜戦より多いにも関わらず、スタジアムの雰囲気がどことなく変だ。とりまく空気感がどこか冷めているというか、観客が高みの見物を決め込んでいるというか、いまからプロサッカーの試合が始まるとは思えない雰囲気。フワフワした感じでもない、ホームスタジアムにも関わらず、どこか他人事のような雰囲気といえば伝わるだろうか。応援することに疲れたとかではなく、感情が伴わない、どこか冷たい空気感が支配するスタジアム。

 

もちろん、今シーズンずっとみてきたファン・サポーターなら知っている。楽に勝てる相手などいないことを。勝っていてもタイムアップまで油断できないことも。そして、前半は楽勝と思った試合を試合終了間際の失点で幾度となく落としてきたことも。信じて応援するのが怖い。ぬか喜びしても無駄だ。どこからかそんな心の声が聞こえた気がした。

そんなどこか冷めたスタジアムの雰囲気を打ち破ったのは前半終了直前だった。玉田選手のDrストレッチ直伝のゴール。スタジアムは歓喜の渦につつまれ、ハーフタイムを迎えた。

 

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ただ、このまま試合が終わるとは誰しも考えていなかったと思う。相手の指揮官は歴戦を潜り抜けた石崎監督。そして相手FWには大黒選手がいる。案の定、一番注意しなければならないはずの大黒選手に後半16分、一瞬のスキをついて失点しまう。移籍を思いとどまらせた愛犬は元気だろうか?山形の寒さに対応できているだろうか。そんな心配のせいではないと思うが、その後のPKも含めて、失点時にはその場に1万人を超える人がいるとは思えない水をうったような静けさがスタジアムを包んだ。

 

そんな重い雰囲気が支配するスタジアムで、僕はようやく気付くことができた。この試合に足りないものを。なぜ今まで気づくことができなかったのだろうか。自分のアンテナの低さを恥じた。

 

あの圧倒的な存在感がない。どの試合でも、スタジアムが静寂に包まれるたびに輝きを放つ圧倒的な存在感。ホームアウェイ問わずほとんどの試合に出没し、オーナーズシートにも関わらず入念なストレッチをしながら入場待機列に並び、開門と同時にスタジアムに入り、キックオフまでは発声練習で試合に備えてウォーミングアップし、試合中は相手選手(それがうちの選手に削られて痛んだ選手でもだ)に強烈なヤジを飛ばし、審判にプレッシャーをあたえ、「さあ行け!(英語で「レッツゴー!」)」という掛け声と軍配代わりのメガホンを手に味方選手を鼓舞し、ときには失点で落ち込んでいるゴール裏サポーターに向けて「もっとがんばれよコ(オ?)ラー!」というカリスマ性を放つあの方の不在に。

多くの知り合い方があの方の話題をするとき、どことなく関わりたくない感じを出している。それでも僕があの方の存在が気になってやまないのは、あの方のアツさが好きだからだろうか、圧倒的なセレッソ愛を感じるからだろうか、試合後に見せる乙女な表情が好きだからだろうか、いや結論はいたってシンプルだ。実害に遭ったことがないからだ。真剣に応援しているのに、横にあんなのがいたら迷惑に決まっている。あの方の射程圏外から見ているから平気なのだ。

それにしてもどうしたのだろうか。岡山戦の引き分けにブチ切れてピッチにメガホンでも投げ込んで出禁になったのだろうか。いつまでたっても上向かないチームの状態を病んで、身体を壊してしまったのだろうか。ないとは思うが毎年繰り返される失態に、ついに愛想を尽かしてしまったのだろうか。そういえば、ここ最近、試合後のスタジアム付近で、呆然と座り込んでいるお姿を遠くから拝見することが多々あった。もしかしたらもしかするのか?そんな考えが走馬灯のように頭の中を駆け巡った。

 

そんなアホみたいなどうでもいい僕の考えをよそに、試合は進んでいく。そして終了間際に山村選手の同点ゴール。沸き立つスタジアム。けれども僕は喜ぶ気にはなれなかった。オオクマ氏が満足げな表情でうなずき、必殺「おちつけポーズ」をするのを見てしまったからだ。

 

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ここまで来たらなるようにしかならない。どんな結末が待っていようとも、このクラブを見守る。そんな覚悟はとっくにできている。来年の監督?選手の移籍?もちろん気になる。けど今は、この目の前のチームを無理やりでも見守るしかないのだ。文句を言ったところで、悲しいことに何も変わらないのだ。

次の水戸戦、あの方のお姿をお見受けすることができるだろうか、もしお姿を拝見したら、嬉しくて一緒に叫ぶことができるだろうか、「レッツ!(パコ!)ゴー!(パコ!)オオサカ!(パコパコ!)レッツゴー!(パコ!)オオサカ!(パコパコ)」と。いや、できない。僕はネジが足りている人間でありたい。熱狂はサッカーでしたい。メガホンいらない。

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試合後、顔見知りから、あの方は同窓会とかで普通に別の用事が重なれば、そっちを優先すると聞いた。超意外。そして超どうでもいい。絶妙なワークライフバランス。未だにクラブに面影が残る、過労で今話題の、某王手広告代理店に爪の垢でも煎じて飲ましたい。そんな釈然としない思いを胸に家路についた。

※注1  ( )内はメガホンを叩く音。

※注2  本テキストはフィクションです。実在の人物とは一切関係がありません。